ゼロベース思考のやり方 コツは”考える”ことについて考えること
0ベース思考を知っていますか?ベストセラーになった本のタイトルです。
0ベース思考という思考法のことじゃないの?と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、僕の個人的な意見では「0ベース思考」という本にはこれが”0ベース思考”という方法は掲載されてはいないですし、0ベース思考という思考法について書かれた本では無いと思っています。
ですので、「0ベース思考」とは何かと聞かれたら思考法のことではなく、本のタイトルですと僕は答えます。
「ゼロベース思考」という本を読んだからといって難しい問題やあたらく設定した目標を達成できるようになるわけじゃありませんし、ゼロベース思考という思考法(があると仮定したとしても)が身に付くものではないと考えています。
じゃあ読む価値は無いのか?
「めちゃくちゃあります」。
なぜあるのか?
それはデカルトやアリストテレスの書籍を読むよりも読みやす内容で”考える”ことについて考えることができるからです。
考えるためには何を考えればいいのか
「ゼロベース思考」という本には何が書いてあるのか、著者の主張を一言でいえば”もっと考えろよ”ってことがひたすら書かれていると僕は思っています。
誰だって日々色々なことを考えて生きていると思うかもしれませんが、「ゼロベース思考」の著者は経済学者のレヴィットとダブナーというジャーナリストですが、彼らでさえも「なんとか週に1,2度は考えるようにしている」(「ゼロベース思考」P23引用)、それぐらい考えるってことは難しいんです。
だからこそ、彼らがどうやって”考える”ということができるようになるのかについて、思考のポイントなどを紹介てくれて、その事例も紹介してくれて、かつ誰もが読みやすい形で書籍にしてくれているので僕は読む価値があると思っています。
なぜ読みやすいのかについても本に書いてあります。
これだけヒットした著作を書いた人でも週に1.2回しかできない、それも相当意識しないと”考える”ということはできないほど難しい、この事実が書かれているだけでこの本には価値がある。
なぜ考えるのが難しいのかというと、僕は2つ理由があると思っています。
1.考える方法をそもそも知らない
2.バイアスをゼロにできない
いわゆる思考法ってたくさんありますよね。
アナロジーとか逆転発想、フレームワーク、ブレスト、SCAMPER、ロジカル・ラテラルシンキング、等など・・・。
考えるための方法がたくさんあるのになぜ考えるということができないのか?
みんながみんな勝手に自分なりの思考の仕方で考えているからであり、その自己流の思考法には必ず偏りが存在します。
まずは自己流の思考法から抜け出すために、考えるということを考えるにあたって”考える”ためにはどんなことをしなければいけないのか?その基礎を学ぶ必要があります。
そして、その基礎として抑えておくべきなのがデカルトの思考するための規則であると僕は思います。
デカルトの思考するための規則を大雑把にまとめると
1. 確実に真であると認めたものを使う
2. 考える問題を出来る限り細分化する
3. 最も単純なものから始めて複雑なものに達する
4. しっかりと見直す
1を使って、出来る限り細分化した問題を解け、問題は単純なものから取り組めということです。
現時点において確実に真であるツールを使い、分かるかどうかわからない曖昧な問題に取り組むのではなく、複雑な要素が絡んだものではなく、単純な問題から考え始める。
そして最後に必ず見直せ。
これがデカルトの考えるためのルールです。
様々な思考法もこのルールを土台にしているところがあるんじゃないかと僕は思っているのですが、当然このデカルトの方法ですべての問題が解決するわけでは決してありません。
あくまでも”考える”ための取っ掛かりとして大切だということです。
哲学的な問題でいえば、この思考のルールには大きな大きな問題があります。
1. 確実に真である
この「確実に真」であるものをどうやって見分けるのか?です。
デカルトは「方法的懐疑」によってあらゆるものを疑い世界を解体した結果、唯一確か(らしい)「自分」によって認識された外界が確実に存在することを示す方法を探し続けました。
思考から存在を導くことはできないことは多くの人が指摘しているポイントですが、ここでは思考についてを問題としているので存在の話は置いておきます。
確実に真であるとは何を意味するのか、デカルトは直観と演繹によって真理を探求するべきだと言っています。
かなり乱暴にいえば、直観は想像力や感情を排除して事物を認識すること、演繹は原理から出発すること。
カンや思いつきで推論するのではなく、確実に真である(と現時点では信じられている)公理や理論を使い、かつ問題をどんどんと自分が分かる範囲にまで分けて、手が付けられる問題から問いていくこと。
近代における知の基本的な在り方とは「わかるまで分けていく(細かくしていく)」ことだ、と僕は考えています。
問題を細かくして分かるところから手を付けるべきだという思考のルールはとてもわかり易く、納得できるんですが、もう一つの確実に真であることを導くための条件である直観を導くことにも大きな問題があります。
直観は想像力や感情を排除して事物を認識することですがそんなことは可能なのだろうか?という問題です。
バイアスとは何のためにあるのか
本題に行く前にちょっと”ゼロベース思考”という本の内容に関して触れておきます。
どうやったらレヴィットみたいに誰も考えたことがない斬新な「問い」を立てることができるのか、難しい問題を解くヒントとなる要素をみつける嗅覚を養うことができるのか、その発想を得るためのヒントが書かれた本が「ゼロベース思考」という本です。
この本の良いところの1つに「ゼロベース思考」という言葉がベースをゼロにして考えることがゼロベース思考なんだろうなと容易に想像がつくのが、この本の良い点でもあり悪い点でもあり、このタイトルを付けた編集者さんが素晴らしい仕事をしたと感じてる点です。
日本語版のタイトルはゼロベース思考だけど原題は「Think like a Freak」
「フリークみたいに考えろ」ってタイトルだったら何のことだか多くの日本人にはさっぱりだったと思う。
全米で初版が50万部も売れているのは「Freakonomics」というレヴィットの先進的な研究がいかに面白いかが、前作「やばい経済学シリーズ」で実証されていることも関連があると思う。
フリークの意味は著書に書かれている意味を引用すると
常識の枠に収まらない人、既存の慣習にとらわれない人
本文P13より
既存の常識や慣習にとらわれずに問題の根本に立ち返り、新たな視点で問題を捉えることが考えるために重要であることはすぐに分かるけど、ここを勘違いしてはいけない。
常識や慣習を疑うためにはどうやって・どのような経緯で、常識や慣習が産まれてきたのか!を知らなくてはいけない。
例えば、ちょっと前の話題になるけど「国家を歌わない選手は日本の選手ではない」というような趣旨の発言をリオ五輪前の壮行会で元首相がしています。
この発言について自分がどのような立場に立つのかを考え意見する場合、国歌とはなんのためにあるのか?国家・国民とは何か?なぜオリンピックが開催されるのか?ナショナリズムとは何か?について答えられる必要があり、最低限これらの概念の歴史を振り返り、どのように成り立ってきたのかを把握する必要があります。
オリンピックとか国歌の成り立ちを知って、それが現在どのように利用されているのかを知れば知るほど「国家を歌わない選手は日本の選手ではない」という発言のもつ意味の深さには考えさせられるものがあるわけです(元首相がそこまで考えて発言したのかは大いに疑問だけど)
常識を疑えと簡単に本に書いてあったりしますが、常識とされていることにただ闇雲に反対することでは決して無いということです。
これだけでも相当ハードルが高いことが分かってもらえると思うけど、ゼロベース思考に限らず思考する際にはもう一つとてもとても高いハードルがあります。
それはバイアスという人間に備わってしまっている「系統的な」間違いのことです。
偶然の間違いではないので、たまたま起こる間違いのことではありません。
僕らには何らかの理由でいつも同じような間違いを起こしてしまう(偏った思考)
”ゼロベース思考”の1章タイトルは「なんでもゼロベースで考える」です。
洋書において(洋書に限らずだけど)、僕は1章とか本の冒頭にかかれている「はじめに」的なものには著者が最も問題としていることが書かれており著書において大事な箇所だと思っています。
問題はサブタイトルに書かれていること。
バイアスを0にしてアプローチする思考法
バイアスをゼロに、、、(できるのか??)。
さらに本のサブタイトルには『どんな難問もシンプルに解決できる』と書かれているが、シンプル=簡単に誰でもという意味ではありません。
この本におけるシンプルの定義はP21に書かれているので引用します。
経済学的アプローチっていうのはもっと幅広くシンプルな考え方だ。直感や主義主張を脇にどけてデーターを元に世の中の仕組みを理解し、どんなインセンティブがうまくいくのかいかないのか~中略、明らかにしようとする方法をいう。
ここでも直観や主義主張を脇にどけると書かれている。
僕たちはバイアスによって系統的に間違える、であるならばどんな場面でバイアスがかかるのか、どんな種類のバイアスがあるのかを知っていれば、事前に対策を取ることで系統的なバイアスを回避できる可能性が産まれます。
ここでも重要なのはバイアスの種類をどのくらい知っているのかという知識。
しかし、バイアスは行動経済学的なバイアスと医療におけるバイアスでは意味が異なり、探そうと思えばいくらでもバイアスは見つかる。
すべてのバイアスを調べ、その一つ一つに対策を練るなんてことは不可能です。
まずはバイアスの中でも代表的な5つのバイアスに絞って、理解し使いこなせるように訓練しておきましょう。
- 確証バイアス
- 正常性バイアス
- 追認バイアス
- ピークエンドの法則
- プロスペクト理論
一つ一つを詳しくは説明しません(ご自分で調べてほしいからです)が、簡単に説明すると
1.は先入観のこと(情報を集める際は好き嫌いで判断するなど)、最初に持った確証を確かめるために情報を集めてしがいがち。
科学は反証を探す学問であり、確証を探すことが大事なんじゃない。
論文はある仮説を思いついたときに、それが正しいことを証明するんじゃなく、間違いの可能性を潰していくことによってどんどん精度があがる。
科学的な態度とは反証を探していくことともいえるでしょう。
2.自分には起らないと曖昧な根拠による自信をもつことなど、自分は大丈夫と思い込むことなど
3.一度好きになったものとか決断をしてしまうと、それ以降その好きなもの・決断したことを否定しなくなること
4.インパクト・差分・最後に聞いたもの見たことに引っ張られる
5.は理論なので簡単には説明できませんので、調べて自分なりにプロスペクト理論について知識をもってください。
シンプルの定義として紹介した「ゼロベース思考」P21にかかれている、『データーを元に世の中の仕組みを理解』すれば適切な問いが立てられるわけじゃない。
データーはあくまでも数字だから、そこからどんな解釈を導くのかはその人次第ということになるので、十二分にバイアスの罠に陥る可能性があります。
まとめると
- 難解な問題を考えるためには問題を分けて小さくしていき分かる範囲にまで落とし込む
- そして系統的な間違いを犯すバイアスを極力回避する
これが考えるということである。
思考とは考えるという行為を何度も繰り返し行った訓練の結果できるようになる能力である。
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