「脳が認める勉強法」を学んで記憶する力を高める
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最終更新日:2017/06/06 脳関連のコラム, 記憶力を伸ばすトレーニング, 記憶力を高める方法
この記事では本の内容をざっくりと紹介し、記憶力について考えてみたいと思います。
何を考えるのかというと僕達がどうやって物事を記憶するのか?記憶したことをどうやって現実の生活に活かすのかということです。
これから紹介する方法は学生がテストで良い点を取るための学習法ではなく、どの年代の人にも当てはまります。
新しいく何かを始める際にどうやって、その技術や知識を習得し、反復し、定着させるかについて以下の本から学んだ要点をまとめたものになります。
タイトルを読む限り勉強法についての本のイメージを持たれるかもしれませんが、この本は巷にあるたくさんの勉強法やテクニックを1つにまとめるために一体どんなことを考えればよいのかという疑問からスタートし、その答えを活動中の脳に求めた!というのが本の主旨ですが、この本が提案していることは僕達が今まで常識として考えていた勉強法とはかけ離れています。
例えばこんな方法が紹介されています。
- 場所を変えて勉強するほうが効率が上がる
- 2時間の勉強時間を一気にこなすより数回に分けたほうが良い
- 行き詰まったら中断することを良とする
静かに集中できる場所でたくさん勉強することは実は効率が悪いかもしれない!!ということ。
この方法が絶対的に正しいわけではないが、人間の行動パターン(つまり人生)から考えてみて、私達が日常生活で自然に行っていることは、学習でも同じパターンで行動したほうが効率がよくなるのではないか、と考えてみると、ずっと同じ場所(大半は勉強机)に座って、何時間もずっと同じ科目を勉強する方法論が悪いわけではない(そうしたほうが良い場合もある。例えば講義をうけるなど)、勉強する内容によって勉強方法も変えるべきであると本は主張します。
そして個人的に面白かったのは「テスト」は最強の勉強ツールかもしれないという提案。
確かにテストで良い点を取るためだけに勉強をしているわけではない人も大勢います。
勉強や学習は学生だけがするものではないからです。
しかし、テストは学習においては重要なツールなのでテストで良い点を取る必要がない知識の学習や技術の習得においても積極的にテストを活用すべきなのです。
学習って何?
何かを学ぶということは人間にとってどんな意味があるのだろうか?もしくはどんな行為を学習するとよぶのだろうか?
僕が今回読んだ本では学習に関する理論が明らかにしていることは
- 思い出す
- 忘れる
- 覚える
この3つの関係性が明らかにすることで、脳がどのように新しい情報を保存するのかが明らかになる。
意外に思うかもしれないが「忘れる」という能力は学習にとってとても大切な能力だ。
僕たちは忘れることができるから、新しい情報や大事な情報を保持することができる。
脳内にある記憶は現在の研究では、徐々に消え去るのではなく、ずっと存在しているが、その記憶を思い出せるかどうかは、「(学んだことなどの記憶を)保存する力」と「(記憶を)検索する力」が強いかどうかにかかっている。
「保存する力」は意識的に覚えたこと、つまりは繰り返し使うことによって力が増える。
繰り返し使うことによって「検索する力」が強くなり、その情報が使われ続ける限り失われない。
算数で習った九九が記憶から消えないのは、日常的に計算をする際に足し算や引き算、掛け算、割り算を利用しているからだ。
この記憶を引き出す力である「検索する力」は使わなければ、どんどんとその能力が低くなる。
私たちは膨大な情報を受け取るので、日々必要のない情報を忘れることで本当に必要な情報かどうかをふるいにかけている。
一度忘れてしまった情報だとしても、検索する力を使って思い出したとき、その記憶は以前よりも強く保存されるようになる。
保存する力は、その対象との距離が近ければ近いほど強くなる、ではどのように検索する力を高めるかが記憶する・情報を保持するために必要なのだろうか
静かな場所より音楽をかけた方が勉強には良い
いつも同じ場所、静かな場所、耳栓などで音を遮断することが本当に勉強に必要な環境とは言えないかもしれない。
何かを記憶するために勉強をしているときに、私達は目の前の勉強だけに集中しているのではなく、どんなものが目や耳に入っているのかを知覚している。
様々な研究から判った事実は、人は勉強していたときと同じ精神状態・環境にいるときのほうが成果があがる。
アメリカ政府が行った驚くべき実験ではドラッグを被験者に与えるグループと、偽薬のドラッグを与えるグループに分けて、いくつかの単語を覚えさせた後、さらにドラッグを吸わせるグループと吸わないグループを複数作り、ドラッグがどの程度記憶に影響するのか実験している。
実験の結果はテスト前の環境と、テスト直前の環境が同じグループのほうが異なる環境を与えられたグループよりも成績が良かった。
最初に偽薬を吸い、直前にドラッグを吸ったチームより、偽薬を吸ったグループのほうが成績が良かった。
もちろんドラッグを吸ったグループは2回めに偽薬ではなく本物のドラッグを吸ったチームのほうが40%も成績が良かった。
ただし、この研究結果によって報告されていることは、ドラッグやアルコールは何かを思い出すきっかけを創る要因としては大した効力をもっていないことが報告されている。
この実験が示していることは、脳は記憶を組み込んだ状態を記憶しているが、その状態を復元したからといって必ず記憶が呼び起こされるわけではないが、異なる環境で試すよりは効果があるということだ。
この実験では人間の気分や感情などがどの程度記憶に影響しているのかを試しているのだが、音楽などを意識せずに流すことによって環境(場の雰囲気など)が与える影響についても実験が行われている。
クラシック音楽を聞きながら勉強をしたグループは、テストの時に同じクラシックの曲を聞いた場合、ジャズや静寂の中でテストを受けた被験者よりも良い成績をあげたという実験がある。
これはBGMが無意識に保存された記憶に組み込まれるので、同じ音楽を聴くことによって記憶を呼び起こすためのきっかけが生まれるからだと考えられている。
つまりは「検索する力」がましたということだ。
では、静寂の中で勉強をすることは意味のないことなのだろうか?テスト会場には当然だが音楽もかかっていないし、テスト勉強中にアルコールを飲み、テスト本番前にも酒を飲む選択をする受験生がいるはずがない。
音楽や酒など外的な要因をとっかかりにして、記憶を呼び起こすことはテストのときにはできないが、記憶を呼び起こすとっかかりは多い方がよいというのが実験でわかっている。
実験では、勉強する部屋を変えたほうが同じ部屋で勉強をするよりも思い出しやすくなるという結果がでている。
はっきりとして原因は分かっていないものの、可能性として、最初の部屋で勉強した時に得られる情報(窓の外の景色や部屋の明るさ、外の騒音など)と次の部屋で得られる情報は脳内では別々に記憶されるものの、情報を思い出そうとするときはとっかりが増えることになるのではないかと考えられている。
私たちは何かを思い出そうとするとき、最初は1つの情報を頼りに思い出そうとするが、それができないときは別の情報を元に記憶を呼び起こそうとするだろう。
例えば芸能人の名前を思い出せない時、出演していたテレビドラマ→CM→映画→バラエティ番組といった具合にどんどんと情報を遡っていくが、それはつまりその芸能人が出現した場面を多く見ていたからできることだ。
この分野の研究はまだ答えが完全にはでていない途上の研究ではあるが、静寂の中目の前に勉強に集中できる環境よりはスタバのようなカフェのほうが勉強が捗るという体験をしたことがある人にとっては納得できる研究結果といえるだろう。
勉強時間は分散させるべし?
1週間の勉強時間を10時間に設定したとしよう。
中には土日に5時間、5時間勉強して10時間をクリアしようとする人もいるかもしれない。
だが、研究では1日1時間から2時間と小分けにして勉強したほうが効率的だ。
僕たちはテスト前に徹夜で詰め込み翌日のテストを無事乗り切った経験がある人は多いだろうが、たしかにこの勉強法が効果がある。
ただし、忘れるのも速い。
理由は簡単、試験前に勉強したことを試験が終わってから復習することがほぼないから。
学んだことを記憶に留めるためには、間隔をあけて何度も復習しなければならない。
では、どのくらいの間隔をあかれば最も効率よく学習することができるのだろうか?
実験から得られた最適解のうちの1つとして捉えてほしいのだが、今回読んだ本に書かれていた事例を引用すると
以下引用
試験までの期間 | 2回め学習までの期間 |
1週間 | 1~2日 |
2ヶ月 | 1週間 |
3ヶ月 | 2週間 |
6ヶ月 | 3週間 |
1年 | 1ヶ月 |
引用ここまで
「スーパーメモ」というウォズニアック氏が作った理論によれば、語彙や科学などの事実を習得し記憶に留めるためには最初に勉強した翌日か翌々日に復習し、さらに1週間後、1ヶ月後に復習するというメソッドを提案している(スマホ用のアプリあり)。
2つのメソッドを紹介したが、共通していることは何か?
新しいことに挑戦するときは、必ず複数回繰り返さないと脳は記憶したことを引き出すことも、保存する力を強くすることもできないということだ。
新しい専門用語や事例・知識・理念などに触れたときにはざっと目を通すだけで初回は充分だ、どうせすぐに忘れる。
大事なことは目を通す2回めをすぐに行うこと、その時に初回よりも理解度が増しているであろうことを実感すること、さらに期間を置いてもう一度か2度目を通すこと。
これが、現時点で研究でわかっている分散学習によって効率的に記憶する方法である。
テストの重要性は記憶の整理?
もしあなたが全く勉強したことのないことをテストされたらどう思いますか?
当然あなたは問題に答えられません。
もしかすると「テストを受けるだけ無駄だ!」と憤慨するかもしれませんが、テストは受けるだけで意味がある分野もあります。
本で紹介されていた事例をそのまま紹介すると
アフリカ大陸に関してあまり知識がないと前提した上で、4択から5択でアフリカの国首都をテストします。
ボツワナの首都は?ガーナの首都は?
質問のあとにはランダムに選ばれた都市名と正解の首都が含まれた5つ程度の選択肢をあげておきます。
当然ですが、アフリカ大陸に知識のない人にとっては難問であり、まったく正解を予想することすらできないでしょうが、一度テストを受けてから改めてアフリカ国すべての首都を勉強し、翌日テストをします。
翌日のテストには前日出題したアフリカの12国とは別にさらに12国の首都をテストすると、最初に知識ゼロでテストを受けた国の首都の正解率は10~20%あがります。
この事例のように全く知識が無いことに関して先にテストをし、後に講義や勉強をすると本番のテストの成績が10%程度向上するという事例が本では紹介されています。
ただし、この事前にテストを受けるというのはすべての学習分野に応用できるかどうかは微妙です。
テストを受けること、自分の学習した結果をテストすることに共通していることは、覚えていることを測るだけでなく、思い出す力全般を高めることにあります。
テスト勉強をする際にはひたすら見て覚える時間を増やすよりは、定期的に覚えたことをテストする時間を増やしたほうが効率的であるそうです。
そして、このテストの効果は受験勉強は学生のテスト勉強だけに効果があるのではなく、音楽やダンスや難しい論文を読む際にも使えるテクニックになります。
楽器をマスターしたいのならば、数小節ごとに覚えたら記憶を頼りに弾いてみる、論文や概念などは2,3回読んだり覚えたりしてみたら誰かに説明することでテストをすることができます。
この誰かに説明するというのは本当に有効な方法で、子供に今日学校でどんなことを勉強したの?と質問することは非常に有意義な質問であり、家族がいるひとであれば学んだ内容を積極的に説明することは自分の理解を促進します。
誰も説明する相手がいない?
その場合は、誰かに説明するつもりで頭の中で思い出す、簡潔明瞭に書き出して見ると良いでしょう。
記憶するために場所を変え、回数を分散し、忘れることを前提にしテストで思い出すというサイクルを作ることが紹介してきました。
本では記憶することとひらめきなどの問題を解決する能力は別々に扱われているので、解決力を高める方法についていも後日まとめたいと思います。
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