敬語させていただくの用法で注意すべきこと「許可」と「恩恵」
公開日: : 息抜きコンテンツ
させていただく。
よくテレビで芸能人が使っているイメージが個人的にありますが、この言葉を使えばなんでもかんでも丁寧語・謙譲語になるわけではありません。
「します」「いたします」でも十分なのに「させていただきます」とつい使ってしまうのは、そのほうが相手により敬意を表せるように感じるからかもしれません。
させていただくを使う場合には2つの条件があるので、それを満たす場合に使用しましょう。
その2つとは
- 相手側又は第三者の許可を受けて行い
- そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合
出典(敬語の指針 – 文化庁平成19年)
この条件に当てはめて考えてみるとテレビでタレントが「○○番組を担当させていただく」という表現の違和感がわかるはずです。
させていただく 用法の注意は誰に使うか
テレビで芸能人が「~~に出(だ)させていただきます」と使っているのを聞く機会が多いと個人的に感じるのですが、なぜ彼らがこの言葉をよく使うのでしょうか?
彼らは自分がでたいからといって番組に出演できるわけではなく、あくまでも相手の要望によって番組に出演するから、自分が出る(出演)というよりも、番組側が出演にOK出してくれたというへりくだった気持ちを表したいのだと思います。
先程もかいた文化庁が示す「させていただく」を使う際の条件である
- 相手側又は第三者の許可を受けて行い
- そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合
この2点をしっかりと満たしているので、彼らが「させていただく」を使うのは間違っていません。
ですが、この場合は自分を番組に起用したプロデューサーに向かって話しているのならば問題はありませんが、そのような場面以外で使われる事が多いように感じます。
好感度とか、視聴率など私達が彼らの出演を望んだから、番組側が選んだのかもしれませんが、テレビを見ている私たちが彼らの仕事面への許可や恩恵を与えているのかは微妙ですよね。
これはあくまでも推測ですが、あくまでも芸能人の方がテレビなどで「させていただく」という言葉を使うのは、自分を起用してくれた番組側への感謝とともに、番組の視聴者や観客なども含めた「すべての人」への感謝を込めて使っているのだと思います。
不特定多数の方への感謝を述べたいのなあら「おかげさま」という言葉があり、「おかげさまで○○という番組に出演することができました」と言い換えれるのではないかなと思います。
これはとても大切なことですが、「させていただく」という言い方そのものは正しい日本語表現であり、辞書にもきちんと掲載されている言葉です。
広辞苑には「相手の指示を頂戴してしてするという卑下した形で自分の動作を謙遜した意を表す。最初上下関係を強く意識する社会で使われていたが、戦後一般化された」と書かれています。
相手の指示あるいは許可が先行している場合において、自分が何らかの利益を得る場合に使う言葉であり、その相手に敬意を示すために使う言葉です。
「させていただく」の用法で注意が必要なのは、店の休業を張り紙などで告知するときの表現「本日,休業させていただきます 」など自己都合なのか、誰かの配慮によって休業したのかが曖昧な場合には注意が必要です。
「発表させていただきます 」もよく使われる表現だが、その場にいる教授や同僚や上司などの第三者の存在が曖昧な場合は「発表いたします」のほうが無難な表現です。
いちいちこちらが許可したようなニュアンスを出されると困る場合には「させていただく」という表現は控えたほうがよいということになります。
相手の許可という前提がありますが、「させていただく」は自分側が行うことを表す言葉なので、誰かに注意を促すとか、相手側の行動に対して使うことばではありません。
させていただくの難しさ
「させていただく」というた敬語の形式は文化庁が定めた明確な条件があります。
しつこいですが、改めて文化庁の敬語の敬意から引用すると
ア)相手側又は第三者の許可を受けて行い,
イ)そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合に使われる。
この条件を満たしているかどうかを曖昧にしたまま使うことができてしまうのが「させていただく」という言葉の使用域を広げています。
例えば自己紹介で、
「○○大学を卒業させていただきました」と言われた場合、違和感を感じるケース。
しかし、文脈にろくに学校もいかず落第寸前だったが教授の格別の配慮、友人の支えなどがありなんとか卒業でき感謝の意を含んだ文脈の場合、適切な表現といえるかもしれない。
「改めてお電話させていただきます」も、相手からの電話なのか、自分からかけた電話なのかも大事ですし、何よりも話の内容しだいによっては「差し上げます」と伝えたほうがよい場合もあり、「させていただきます」の許容範囲に個人差があるのが難しいところ。
相手の許可があるかどうかが微妙な時や不特定多数の人に伝える場合など「させていただく」には、人によって解釈の個人差があることに注意して適切な言葉を選ぶ必要があります。
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